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No.18 八ヶ岳(赤岳)/2010年8月15日~16日
【 交通ルート 】

自宅 [ 茨城県南 ] → 常磐道 → 首都高 → 中央道・諏訪南IC → 美濃戸口
→ 美濃戸 → やまのこ村駐車場

【 山行ルート 】

やまのこ村駐車場 → 南沢コース → 行者小屋 → 文三郎尾根経由・赤岳
→ 地蔵尾根経由・行者小屋 → 下山 → 帰宅

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お盆は、1泊2日のテント泊で八ヶ岳(やつがたけ)に行ってきました!

わかなちゃんは、お盆もお仕事なので一人で行ってきました♪

八ヶ岳は、長野県と山梨県にまたがる山塊の総称であり、山そのものに八ヶ岳と名付けられた山は存在しません。八ヶ岳の名前の由来は諸説ありますが、一般的にわかりやすい説としては、山名の文字通り、八つの峰に見えるからだといわれています。

 
 

夏沢鉱泉本沢温泉を結ぶ夏沢峠を境に、北八ヶ岳と南八ヶ岳に大きく分かれています。僕が今回登ってきた赤岳は、南八ヶ岳に属しており、その他にも横岳・硫黄岳・阿弥陀岳、大同心・小同心などの山々が連なっています。

今回の登山の主な目的は、「鎖場の克服」。去年の妙義山に登ったときに初めて経験した鎖場。断崖絶壁の「カニの横ばい」に命からがら乗り越えたものの、それ以来、鎖場に恐怖を覚え、あえて鎖場のない初級の山ばかり選んで登っていました。ガイドブックを読んでは「鎖」の文字のない山ばかり行っていたのです。

けれども、このままじゃいけない、最高の景色に出会うためには乗り越えなければいけない壁もあるはず!と思い、八ヶ岳をその練習の場として行くことを決意しました。

妙義山で出会った中年の夫婦にも、「妙義の鎖場はイヤらしい」「妙義がクリアできれば他の山もだいたい、いけるよ」とも聞いていたので、そのことも確かめたかったというのもあります。

午前3時起床。準備をして3時半出発。

常磐道から首都高を通り、中央自動車道をまっしぐら。約230km の道のり。高速道路がすいているうちに近くまで到着しておきたかったので、八ヶ岳PA までノンストップで走りました。

天気はどんよりとした曇り。霧が発生し、視界もあまり良好ではありません。登る前からすでにテンションは下がっています(笑)。

午前7時。八ヶ岳登山口の美濃戸口から未舗装の林道を通って、美濃戸に到着。

美濃戸口から美濃戸までの林道は、道が狭い上に、かなり道が悪いので、車の底をぶつけないようにゆっくりと走らなければなりません(ウイッシュでゆっくりと走ったのに底を擦りました)。今までも山に行くのに何度か林道を走ることがありましたが、八ヶ岳ほど道が悪い林道は初めてでした。

道幅の狭い林道で対向車とすれ違える方、状況に応じて坂道でバックできる方、そして、後続車に運転がノロイと思われても動揺せずにマイペースで走れる方以外は、この林道は走るべきではありません。特に、新車の方は、おとなしく美濃戸口に駐車して林道を歩いたほうがよさそうです♪

ちなみに、この林道は歩くと約1時間ほどです。車でも、のんびり走行で20分ぐらいはかかるでしょう。林道には、面白みのあるところは特にないのでそこがまた辛いところかも…。

午前7時半。やまのこ村の駐車場に停めます。



2日分なので2000円払います。やまのこ村よりも、少しだけ上に登った赤岳山荘のほうが、駐車場はよく整備されていたので、停めるならそっちのほうが安心かもしれません。



林道にはコスモスが咲いていました。



準備をすませて午前8時、いざ出発進行~☆

コースとしては、美濃戸から南沢コースを歩いて行者小屋でベースキャンプを張り、翌日、そこから軽量装備に切り替え、地蔵尾根もしくは文三郎尾根から赤岳のピークを目指すというルート計画です。もし時間に余裕があれば、阿弥陀岳硫黄岳にも行きたいと考えていました。

南沢コースは、文字通り、沢沿いに登っていきます。川のすぐそばを歩くわけではないのでそれほど危険はありませんが、ぬかるんでいる箇所も多いので注意が必要です。



登りはじめてすぐに、美濃戸山荘が見えてきました。八ヶ岳登山口の案内板が現れ、ここからがいよいよ登山本番です。



まずは、林道を歩いていきます。単独登山にならないよう、ある程度の間隔をあけて自分よりも前に人を歩かせ、後ろにも人を歩かせて、僕がその中間を歩くようにペースを保っていきます。



前に人がいれば道迷いを防げるし、後ろに人がいればもしも自分にトラブルが発生したときに助けてもらえる(最悪、連絡ぐらいはしてもらえる)可能性を残しておけるわけです。単独登山者としての、最低限の危機回避策といえるでしょう。

なので、できるだけ自分と同じペースで歩く登山者を見つけることが大切です。後ろから追い抜いぬいてくるような登山者は、明らかに自分のペースより速く歩いている方なので、追いかけようとはせずに素直に抜かせてあげましょう。追いつこうとすると自分のペースが乱れて逆に疲れてしまいます。



登山道は、岩だらけの道が多く、日の当たらない場所ではぬかるんで滑りやすくなっています。ときどき、大きな岩も見かけました。





登山道とは思えないような、倒れ木が散乱している場所もあり、進む先をきちんと見極めてからじゃないと道をはずしかねないので注意が必要です。登山道では、黄色のテープが目印となっているので、道がわからなくなりそうだったらすこし遠くの方を見て、黄色いテープを確認しながら行きます。



出発してから2時間50分。約20キロのザックの重さが徐々につらくなってきました。15分歩いてはザックを下ろし、また歩いては休憩を繰り返します。いったい、いつ山小屋に着くんだ!? もう歩けない…!

木が倒れているところで僕もぐったりとしてしまいました。AMラジオを聴きながら20分ほど休憩しました。



さぁ、いつまでも休憩してても動くのがいやになってしまうので出発します。行き交う人々は、軽量ザックの方がほとんどですが、テント泊をする予定の登山者は、やはり僕と同じように大きくて重いザックを背負っています。つらいのはみんな同じですねっ。


15分後、広い川原にでました。「あ~もう歩けね~~!」とくじけそうになり、ここでまたひと休憩。前を歩いていたカップルも同じ場所で休憩していました。みんな疲れているんだなと思いました。




15分休憩後、再び出発。足取りはさらにだるくなり、歩行をサポートしてくれるはずのトレッキングポールすら邪魔に思えてきます。いったい、いつ小屋に着くんだろうか…と思っていたところに、「行者小屋」の案内板を発見っ!!俄然、元気がでてきました♪



そこから3分ほど歩くと、ようやく着きました!
行者小屋!!

なぁんだ、もうすぐそばまできてたんじゃん~☆
わーいわーい!



時刻は11時40分。出発してから約3時間40分かかりました。

もうヘトヘトにくたびれていたので、すぐに受付にてテントの手配を済ませます。1泊2日まで(翌日の夕方ぐらいまで)なら1000円でテント場を借りられます。

もうすでに何張りかのテントが立っているようですが、前日の人のテントが残っているだけかもしれません。



すぐにでも横になりたい気分だったので、すぐさまテントの設営を開始。人がこないような寂しいところに設営するのは怖いので(←意外と怖がり)、お隣さんが子供連れのテントの横に設営させてもらいます。賑やかで親子の会話が聞こえてきそうなところがポイントです。うるさすぎても勘弁ですが…。

テントの上には、汗でびしょぬれになったパーカーを置いて乾かします。ポリエステル素材なのですぐに乾きます。

石をどかして整地し、6ヶ所を石でペグ打ちし、四隅のヒモを石にくくりつけて固定させます。



テントをたておえたら、テント内の整理。インナーシートを敷いて、エアマットを膨らませます。

そして、明日の赤岳登山に向けて、58リットルのザックから、17リットルのサブザックに荷物を詰め替えます。エーグルのパッカブルタイプのザックです。サブザックにいれていくものは、レインウェア、ツェルト、ファーストエイドキット、スパッツ、ダウンウェア、カメラ、おにぎり2つ、ティッシュ、水筒、予備の水500mlなど。



荷物の整理を終えたら、山小屋に昼食を作りにいきます。と、その前に、念のため、テントに鍵をかけておきます♪



昼食は、あらかじめ好日山荘で買っておいたフリーズドライ食品。うどんなら腹持ちもいいだろうと思い、「岳食」というシリーズの味噌煮込みうどんを食べました。



う、う、う、うみゃ~!疲れたあとの食事は最高ですねっ!空腹こそ最高の調味料です!



昼食を食べ終えた後、テントに戻ってボディーシートで全身さっぱり♪ そして、重症化した肩の痛みをとるべく、サロンパスを介の字張り☆ ゆったりと休憩しながら FMラジオの 79.5 を聴きます。




ほんとならば、ここから硫黄岳に行く予定でしたが、疲れ果ててとてもそんな気にはなれませんでした。今日は、山小屋でゆっくりして、明日、赤岳を攻めることに計画を変更しました。

といっても、山でやることなんて特になにもない。ひたすら、暇な時間が流れます…。することといったら、八ヶ岳に来る前に買っておいた「ヤマケイアルペンガイド 八ヶ岳」のガイドブックを読むぐらい。明日のコースを念入りに調べておきます。

テント泊をする登山者はみな、思い思いの時間を過ごして楽しんでいます。



隣のテントでは、子供たちが騒いでいて賑やか。隣のお父さんとお話をしたりして時間を過ごしました。

そこで得られた情報は、もともと僕は危険箇所の少なそうな地蔵尾根から登って、地蔵尾根を下る往復ルートを考えていたのですが、そのお父さんの話によると、文三郎尾根のコースのほうが最短時間でいけるし、斜度もそんなにないし、地蔵尾根よりは楽だと思うよとアドバイスをくれました。

下調べしてあった情報とはだいぶ話が違いますが、明日の天気次第で、文三郎尾根コースもありなのかなと思い始めてきました。

テント内で本を読んでいるうちに、いつの間にか30分ほど寝ていたようです。テントの外に出ると、もう夕暮れの時間帯。



急いでテントから三脚を取りだしてきて、夜景を撮影しました。時刻はもう19時を回っていました。



急に雲がひきはじめて、大同心、小同心、横岳もはっきりと見えていました。



山の夜は早い。20時になると周りは就寝モード。気温15度。寒くもなく暑くもなく、ちょうど過ごしやすい気温。とても静かな夜でした。

ですが、寝ようと思うと、隣のテントからオヤジのいびきが聞こえてきたり、さらに隣のテントからは終始、咳き込む音が聞こえてきたりしてなかなか寝つけません。

特に気になった音は、テントを出入りするときのチャックを開け閉めする音。かなり耳障りに感じてきて、あらかじめ準備しておいた、NASA が開発したという耳栓をして寝ました。

それでも、低周波の音はよく響いてくるらしく、耳栓の効果がそれほどあるとは思えませんでした。さらには、下界で花火大会をやってるらしい音も聞こえてきて、結局、眠れたのは1時間後の21時頃でした。

明日は、午前4時に起きる予定です。

赤岳登頂に向けて、ぐっすり眠って鋭気を養います。

2日目、朝3時起床。

4時まで寝るつもりでしたが、周囲はすでに出発の準備のためにガサゴソと物音を立てる音が聞こえて来ました。

トイレに行きたかったので、ヘッドランプを装着し、真っ暗闇の中を歩いていきます。暗闇の中をヘッドライト1本で歩くのは想像以上に歩きにくいと思いました。遠くを照らすと足元が見えずにつまづくし、足元ばかり照らしていると全体を把握しづらくなり、崖っぷちなどでは危険を伴います。

ベストな方法として、ヘッドライトで遠くを照らし、もうひとつ、腰ベルトに足元を照らすランプを装着すれば歩きやすそうな気がしました。

行者小屋のトイレは、工事現場やイベントでよくみかけるタイプの仮設トイレ。落下式便所(ボットン便所)になっています。それ故に、トイレの中は鼻をつんざくような異臭を放っています。

それでもトイレがあるだけマシと思わなければいけません。臭くても我慢我慢…。

ちなみに、お尻を拭いた紙は便器の中に捨ててはいけないようです。顔の手前近くにダンボール箱が置いてあり、そこに捨てなければいけません。なので、他人がお尻を拭いたトイレットペーパーの紙が顔のまん前にあるわけで、臭くないわけがありません(笑)。ま、山に来た以上、こういうところで贅沢をいってはいけないのでしょう。

すっかり目が覚めてしまったので、フリーズドライ食品の赤飯を食べます。お湯を沸かして20~30分待つだけで完成です。あまりおいしくはありませんでした。アルファ米をおいしく食べるためのコツを知りたいところです。それと、味噌汁をのみました。



次第に空も明るくなり、テントを撤収する人も増え始めます。僕の場合は、ベースキャンプとしてテントを置いて赤岳を目指すので、とりあえず昨日詰め替えたサブザックに忘れ物がないかをチェックし、テントに鍵をかけ、午前6時10分に出発です。

早朝も大同心と小同心がはっきりと見えていました。



テントは結露してびしょびしょの状態だったので、帰って来る頃には乾いてることでしょう。

コースは、鎖場・岩場があるという文三郎尾根コースを登って行き、比較的、危険箇所の少ない地蔵尾根を下って行者小屋に戻ってくるという計画にしました。

とりあえず行者小屋に行って、これから文三郎尾根に向かおうとする登山者を見つけにいきます。ちょうどそこに、僕と同い年ぐらいのお兄さんが、文三郎尾根に向かうというので、途中まで同行させてもらうことにしました。

とはいっても、彼は3人グループできていたようなので、あくまでもマイペースに歩いてもらうようにして、僕が遅い場合は容赦なく先に進んでいってくださいと伝えました。さぁ、いよいよの赤岳に向けて登山スタートです。


天候は曇り。早朝は晴れていたのですが、6時ごろになると赤岳にはすっかり雲や霧で覆われています。数十メートル先が霧で見えない感じで、初めてこのコースを歩く僕は本当に大丈夫なんだろうかと不安がよぎります。



急階段がありました。急階段というのは足場が安定しないので岩を登るよりもずっと緊張します。こういうときは、岩場を通過する際の基本技術として三点支持で歩いていきます。 両手両足の4点のうち常に3点で確保しながら移動していくわけです。

こうすると、安定感がぐっと増すので、怖くて腰がひけてしまうということもなくなります。腰がひいてしまうと、スリップ、滑落しやすくなりますので、腰をぐっと前にだして登っていきます。



急斜面を登ること20分。休憩適地に到着しました。そこでは、4人の登山者がこれから先に進むかどうかを検討しあっていました。その気持ちもわからないでもありません。前は霧でまったくみえないのです。このまま頂上に登っても展望は得られないかもしれない状況のなかで、前進するか後退するかの判断はとても難しいところです。

結局、彼らはいま歩いてきた道を引き返すことにしたようです。リーダー格の人もいたようなので、きっと他の仲間を守るという責任も負っているのでしょう。無理することなく、彼らは勇退していきました。



僕もそこで一瞬、ひきかえそうかと思いましたが、頂上にいけば一瞬でも晴れ間が見れるかもしれないという淡い期待にかけて再び登り始めました。

道が徐々に狭くなってきます。



分岐点に到着しました。鎖場の連続する赤岳山頂への最短コースを取るか、中岳・阿弥陀岳経由で赤岳山頂を目指す迂回ルートを取るかの分岐点です。



ここまできたらもう鎖場・岩場の文三郎尾根に挑戦するしかないと思い、迷わず赤岳山頂への最短ルートを取ります。



と、そのとき、急に霧がひきはじめました。



山頂も顔を覗かせました!空が、青い!

気持ちの問題とは大きいものです。いままでブルーだった気持ちが晴れやかになり、疲れが一気に吹き飛んでしまいました。重かった足取りは軽くなり、引き返したいという思いよりも、早く頂上の展望を見たいという思いが強くなりました。それは僕だけでなく、一緒に登っていた登山者の方も同じでした。



しかし、頂上が見えたのも束の間。一瞬にして山頂は霧で覆われてしまいました。



そして、ついに到着しました。クライマックス、赤岳頂上直下の岩稜です。ここを乗り越えなければ頂上にはたどり着けないことは、事前調査でわかっていました。



ここからはトレッキングポールは邪魔になるだけなのでザックにしまいます。カメラは、コンパクトデジカメだけを残し、一眼レフをバッグの中に収納します。

気をひきしめます。寒くなってきたのでダウンジャケットを着込みます。一瞬の気の緩みが滑落につながりかねない急登です。頼れるのは、自らの両手両足のみ。



ここから20分~30分は急な斜面を登り続けます。

危険な箇所には必ず鎖がかけられています。ここで重要なのは、3点支持。両手両足の3点は常に確保しながら登って行きます。鎖に頼りすぎてもいけません。鎖をつかむと鎖が左右にゆれることで、体も左右に振られてしまい、かえって不安定になります。

自分より前に登っている人の鎖の揺れがおさまっていないこともあります。鎖はあくまでも補助的に使いましょう。



後ろを振り返るとかなりの高度感。この先、岩場の連続がどこまで続くのかと考えると恐ろしくなってきます。もはや、写真を撮る余裕すらありません…。 それでもめげずに登りつづけていくうちに、一瞬だけ、雲が切れました。・それは、時間にして2~3分ほどの短い時間でした。



赤岳山頂直下の展望!最高です!



阿弥陀岳が見えており、登山者の影もあります。



雲間から零れ落ちた光の筋が山々を照らしていました。



しばらく写真撮影を楽しんだ後、再び岩場を登り始めます。そして、ついに山頂が見えてきました!!

しかし、霧でなにも見えません!(笑)



午前8時11分。山頂に到着です。長く険しい岩場でしたが、頑張りました。偶然にも、中岳経由で登ってきた隣のテントのおじちゃんも頂上に登ってきたので、写真を撮ってもらいました♪



山頂は、霧でほとんどなにも見えませんでしたが、しばらく待っていると晴れ間が見える瞬間が何度かありました。快晴ではなくて残念でしたが、ここまで登ってこれた達成感を得ることはできました。

頂上からは、赤岳頂上山荘が見えています。



ここからはいよいよ下りです。赤岳頂上山荘から、地蔵尾根を通って行者小屋を目指します。

急斜面ですが、足場がしっかりしているので地蔵尾根を下るよりは高度感はありません。鎖も設置されていますが、文三郎尾根コースの岩場になれてしまった僕は、鎖を使うよりもむしろ、自分の手足を使ったほうが安心できるようになっていました。慣れとはおそろしいものです。



30分ほど歩くと、赤岳展望壮に到着します。霧はますます深くなり、先がどんどん見えなくなってきました。ここで、持参してきたおにぎりをひとつ食べて、すぐに下山路を歩き始めます。



地蔵尾根は、山の稜線沿いに歩くのでとにかく風が強い!しかも、下から上に向かってつきあげるように吹いてくるので、しっかりと耐風姿勢をとりながら歩かないととても危険です。

数十m先が見えない状況下で恐怖が先行し、前に進むのをためらいます。



霧で髪の毛はびしょびしょ。帽子をテント場から持ってくれば良かったと後悔します。

稜線沿いを歩くと、お地蔵さんが現れてきました。どうやらここが地蔵尾根へ下山する分岐点になります。さらに稜線沿いに歩くと、横岳に向かうことになります。



あまりの風の強さで下に降りられるのかどうか不安でしたが、少し下ると徐々に風もおさまってきました。霧で先が見えないのが不安をあおられますが、迷うような道ではないのが唯一の救いです。

途中、岩場をトラバースするような道もありました。滑落事故多発の注意を喚起する案内板を発見。



地蔵尾根は、急階段がたくさん登場します。階段で一気に高度を下げているわけです。等高線が密集している地点でもあります。階段はスリップしたら終わりです。岩場を下るよりも怖いので、きっちりと3点支持を守って降りていきましょう。



樹林帯は霧で包まれ、幻想的な雰囲気をかもし出しています。



岩場を抜けると、徐々に展望もよくなってきました。



あとはもう樹林帯をひたすら下るだけ。



そして、懐かしい行者小屋に戻って来ました。



そこは、見慣れない顔の人たちで賑わっていました。行者小屋は、文字通り、いろんな目的の人たちが交わる交点。赤岳を目指す人もいれば、阿弥陀岳・中岳、権現岳、網笠山、県界尾根を目指す人もいます。

かとおもえば、天狗岳、硫黄岳、横岳方面から縦走してくるひともいれば、これから横岳方面へ縦走を目指す人もいます。

登山好きな人が同じ点で交わる山小屋は、情報交換の場でもあり、一期一会の交友を楽しむ場でもあるのです。同じ趣味を持っているもの同士、 話に花が咲かないわけがありません。

ひとりで登りにきてる人、ふたりで登りにきてる人、3人以上で登りにきてるひと、いろんな人がいますが、八ヶ岳が他の山と比べて少し違うなと感じたことは、数十人を引き連れた団体の登山客をあんまり見かけなかったこと。

そして、八ヶ岳に登るひとはみな、装備がしっかりしているなと感じました。ミニスカートにハイヒール、短パンにクロックス、ジーンズにサンダルなんてふざけた登山者は1度も見かけませんでした。

山小屋に到着後、乾いたテントを撤収します。少し軽くなった荷物を背負って、美濃戸まで戻ります。ここからが、つらく長い下山道の始まりです。



下るときは天候が晴れていました。木々の間から差し込む光の筋がこんなにもきれいだったとは、登ってくるときは全く気づきませんでした。登りと下り、同じ道を往復しているだけなのに、まるで違う道を下っているような錯覚に陥りました。



八ヶ岳の林道は、深い森の中に紛れ込んだよう。じっくり撮りたい気持ちもありましたが、疲れてそれどころではありませんでした。



2時間20分かけて、ようやく美濃戸山荘まで下山しました。これから八ヶ岳に登りはじめる人たちを見て、昨日の自分を見ているようで、なにかとても初々しい感じがしました。



美濃戸山荘で15分ほど休憩。無料サービスのお茶をいただきました。



14時20分。駐車場の「やまのこ村」に到着。すっかり疲れ果て、運転するのもだるかったです。美濃戸から美濃戸口まで悪道を走らせます。

美濃戸口に出たすぐのところに、お風呂が500円ではいれる山荘があったので、温泉地を探すのも面倒だったのでそこで軽く汗を流します。

すっきりさっぱりしたところで帰路につきます。お土産屋さんを探しましたが、八ヶ岳周辺にはほとんどそういった店はなく、探すのも面倒だったので八ヶ岳PA によってお土産を買いました。

お盆最終日。高速道路をびゅんびゅんと猛スピードをあげて走る車の大群を眺めながら、僕は思いました。

「あぁ、八ヶ岳で過ごした2日間は、時間の流れがとまっていたんだな」

って。

高速道路に出た瞬間、急に時間が動き出し、山時間と日常生活で過ごす時間はまったく異質なものであると感じたのです。

16時ごろ、八ヶ岳PA を出発し、談合坂PA から上野原までの大渋滞を経て、22時半にヘトヘトになり到着。

でも、なぜだろう。こんなにも疲れているのに、僕はまた八ヶ岳に行きたいと思ったのです。同じ山にもう一度行きたいと思ったのは、八ヶ岳が初めてのことです。

八ヶ岳は、初心者コースから上級者コースまでさまざまなルートが用意されています。今度はまた違うルートで八ヶ岳を訪れてみたいです。蓼科山、横岳、硫黄岳、行ってみたい山はまだまだたくさんあります。

妙義山で体験した「カニの横ばい」の恐怖を克服するために行った八ヶ岳でしたが、あの怖さを一度体験してしまえば、八ヶ岳(赤岳)はそれほど難易度の高い山ではなかったんだと気づきます(←個人差があるので真に受けないようにしてください)。

八ヶ岳に登ったあと、いろいろとアドバイスをくれた好日山荘の店員さんに、「八ヶ岳の文三郎、行ってきましたよ!」と伝えると、「あれが大丈夫なら、もう横岳だってなんだってイケルよ♪」と言ってくれました。

ガイドブックで、僕が辿ったルートの技術度を見てみると「中級コース」とランクされていました。今まで、技術度が初級の山ばかり登ってきましたが、初めて中級の山をクリアすることができて、また1歩前進することができました。

なんだか僕は少し、自信がついたような気がしました。こうやってひとつひとつの山をクリアしていって、登れる山が増えていくんでしょうね。最終目標は、アルプス制覇ですかね…(笑)。

今回の経験で得た勲章を、リラちゃんにつけてあげました。



次はいよいよ日本一の山、富士山。

今年、一番楽しみにしていたイベントです☆

楽しみ楽しみ。

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