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No.13 武甲山/2010年2月20日
【 交通ルート 】

自宅 [ 茨城県南 ] → 常磐道 → 関越道・花園インター → 皆野寄居有料道路 → 横瀬駅
→ 登山口

【 山行ルート 】

生川登山口・一ノ鳥居 駐車場 → 山頂休憩所 → 第一展望台 → 下山 → 武甲温泉→ 帰宅

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日曜日は、埼玉県・秩父にある武甲山(ぶこうさん)に行ってきました。

メンバーは僕ひとり、単独行です。

 
 

武甲山は、埼玉県の西部、秩父盆地の南端にある山で、現在の標高は1,304メートル。男性的な勇ましい山容を持つ武甲山ですが、昔はもう少し高く、鋭角な山だったそうです。

現在では、石灰岩の採掘のために発破(爆薬を仕掛けて岩石などを爆破すること)が行われ、山が破壊され続けているのだそうです。

僕はそんなかわいそうな山を一目見て、これは登ってこなければならないという妙な使命感に駆られて行ってきました。

コース予定は、生川(うぶかわ)側の駐車場から、武甲山へ登り、小持山(こもちやま)→大持山(おおもちやま)へと3つのピークを越える行程です。かなりの距離を歩くことになるので果たして目的地までたどり着けるのかどうか。

午前5時30分に起床、6時20分出発。常磐道から関越道を通り、花園インターで降ります。
そこから一般道を通り、皆野寄居有料道路(410円もして高い・・・)を通って時間短縮。

道を間違えたこともあり、現地に到着したのはやや遅れて8時30分頃。まずは、横瀬駅に行きました。



ガイドブックやハイキングコースでは、この横瀬駅から6キロの一般道を歩いて登山道に入ると書いてありますが、とてもじゃないけど一般道を歩く気にはなれません。特に武甲山が近くなってくると、石灰岩採掘のためのダンプカーがたくさん走っているので歩くのはちょっと危険です。なので、車で走って時間短縮。

途中、視界が開けて武甲山が見えてきました。遠目から山全体が白くなっており、それが石灰岩で白くなっているのか、それとも雪で白くなっているのか、このときはまだ知る由もありませんでした。



武甲山の登山口へと向かう道は、山にきたはずなのに、癒しとはまるで正反対な石灰岩採掘の工場地帯にまぎれこみます。



工場地帯の途中に10数台ほど停められそうな駐車場がありましたが、そこから登山口までは結構な距離を歩きます。秩父の歴史を感じたい!という方でもなければ、登山口まで一気に車で上ってしまったほうが良いと思います。舗装された道路で、大型トラックがたくさん通るので、精神衛生上もあまり良くはないでしょう。



しばらくすると、舗装されていない細い林道の入り口が現れます(以下、左の写真参照)。とても細い道なので、ここをまっすくで良いのか!?と不安に思いましたが、ここしか道はないので行くしかないのだろうと林道を突っ切ります。

道はじゃり道でガタガタ、雪が解けてグチャグチャ。とても走りにくい道です。Uターンもできない道なのでとにかく前に進むしかない。

舗装されていない林道
少し走ると舗装された道路がある

5~6分ほど車で走ると、15台ほどしか停められない駐車場がありました。しかし、到着した頃はすでに9時半をまわっており、駐車場はすでに満杯。1台停められないこともなかったのですが、雪が積もっている箇所だったのでスタッドレスタイヤ未装着の僕は敬遠し、少し下ったところにあったスペースに駐車します。

すると、なぜか山の中をパトカーが通ります…むう、なんて運の悪い…と思いましたが、「ここ、停めても大丈夫ですか?上が満車なんです~」と尋ねると、「邪魔にならなければ停めても大丈夫だよー。雪が深いみたいなので気をつけてください」と言ってくれたのでそこに停めさせてもらいました。

さっそく、駐車場で準備を開始。ズボンと靴が濡れないようにスパッツを装着。わかなちゃんからもらった日焼け止めのアリーを塗ります♪

そして、少し上の駐車場まで歩いて10分。一の鳥居に到着です。一の鳥居は、一丁目にある鳥居という意味。山頂までは、52丁目まで登らなければなりません。



登山ポストも置いてありました。本来ならポストに登山計画書をいれなければならないところですが、時間もあまりなかったので省略(笑)。こういうところは、これからしっかりしておかないといけないですね。


さぁ、登山開始です。出発は10時ジャスト。だいぶ、時間がおしています。林道の両脇には雪が積もっています。

雪が残る林道
橋を渡ります

10丁目ぐらいまでは、舗装されたアスファルトの道路を歩きます。

25分ほど歩くと、標識が現れます。武甲山頂まで1時間40分と書かれています。



16丁目までやってきました。そして、いまにも壊れそうな橋を渡ります。

16丁目の目印
壊れかけている橋

不動滝に到着。あんぱんまんのコップが置いてありました。誰かが忘れていったのでしょうか。



丸太が腐りかけた橋をわたります。写真ではわかりづらいですが、結構、高い位置に架けられていますので注意して渡ってください。



次第に雪が深くなり、歩きづらくなってきます。他の登山客と会う事もなく、孤独に登ります。武甲山は、熊が出没する可能性がある山でもあるので、ひとりだと心細くなってきます。僕はできれば熊に遭遇したくないので、いつも熊鈴を3つつけて歩いています。複数人の人間がいるかのように装っているわけですが、これが熊避けにどのぐらいの効果があるのかは不明。



出発から1時間20分。ちょうど中間地点の大杉の前にきました。とても大きな杉です。

すれ違った登山客のグループは、そろって杉に耳をあててなにかを聞いているようでした。パワースポットだとか霊感だとか、そういうものに一切、関心や興味がない僕は、とても滑稽な光景に見えました。


さぁ、ここから山頂まではあと60分。がんばるぞっ!


上に登るにつれてどんどん雪が深くなります。休憩中に、ストックが雪の中にささるので楽チンです。アイゼンを持っていないので、雪の上では滑って歩きづらいのですが、凍ってはいないのでアイゼンがなくてもザクザク進めてしまいます。
中間地点の大杉

すれ違う登山客の中には、アイゼンを装着している方も何人かいましたが、それも一部のみで、8割から9割の登山客は、アイゼンを装着していないようでした。滑りやすい箇所では、つま先や踵を雪に蹴りこみ、足場を作ります。蹴りこんだ後は、滑らないように垂直に体重をかけて登っていきます。一般に、キックステップと呼ばれる雪上歩行のもっとも基本的な技術です。



ようやく、40丁目に到着。



道中、一般コース階段コースの分岐点が現れます。普通に考えれば階段コースのほうが楽そうですが、ここまできて階段コースを選ぶ方は少ないようです。事実、階段コースは雪が深く、あまり踏まれていない状態で、かえって歩きづらそうでした。僕も一般コースを選びます。



生川(うぶかわ)基点の登山コースは、ひたすら林道の中を歩きます。これといった展望もありませんので少しばかり退屈です。反対側の浦山口登山道は、尾根づたいに歩くので、生川コースよりは展望がよく、眺めもよいそうです。

12時20分。ついに50丁目に到着。出発してから2時間20分かかりました。もう疲れ果てていたので50丁目の石を見たときは嬉しくなりました。次第に空がひらけてきています。木々の間から青い空が覗いていました。

武甲山、山頂トイレが見えてきました。



僕は疲れ果てたので、山頂に行く手前にある休憩所で昼食をとりました。山頂では、すでに2グループが休憩しており、ストーブでラーメンを温めて食べていました。僕はまだストーブを買っていないのでコンビニで買ってきたおにぎりで我慢我慢…。じゅる…。ちょうど12時半でした。



20分ほど休憩し、出発しようとしたら、小屋にいた定年を過ぎたっぽい夫婦のおばちゃんに話しかけられ、「リュックの後ろのチャックが開いてるよ」と教えてくれて親切にも閉めてもらいました♪

そこから話が広がり、「どこから来たの?」「どうして武甲山を選んだの?」などの質問に応じながら、彼らは地元民だということを知りました。

その夫婦は、先月、大雪山の旭岳に行ってバックカントリーをやってきた話とか、茨城の竜神橋や袋田の滝のほうにも行った話をしていました。そして、地元の秩父祭りの話や、目の前に見える山には福寿草の大群落があるんだとか、いろいろ教えていただきました。

彼らは、僕とは逆方向の浦山口から登ってきたらしく、浦山口登山コースのほうが展望が開けていてオススメだといっていました。

また、登ってくる道中で大きな熊の足跡を発見したらしく、「あの大きさは100キロはある大きな熊だな」とおっしゃっていました。ほ、ほんとに熊がいるんだ…と思いながら、少し血の気が引いた気分でした。

13時。おばちゃんに「これからどうするの?」と聞かれ、「小持山から大持山へ行って、妻坂峠経由で帰ります」と言ったら、おじちゃんが「たぶん、いまからじゃ間に合わないと思うから小持山まで行ったら引き返してきたほうが良いよ」とのアドバイスをもらいました。

確かに、僕が持っている地図で確認しても、武甲山の頂上へ登ってきた距離の3倍以上はあります。僕も無理だろうなと判断し、小持山へ向かって引き返してくるとの旨を告げて、休憩所を出発します。

小持山へと向かう前に武甲山のメインでもある展望台にまだ行っていないので、まずは展望へと急ぎました。休憩所を去るときに、もうひとつのグループの男性が「頑張って!」と声をかけてくれました。きっと僕らの話を横から聞いていたのでしょう。僕は少しだけ元気になりました☆

展望台に行く途中にある御岳神社です。とても立派なたたずまいでした。



その神社を抜けて少し上に登って行くと、第一展望台が見えてきます。そこは、秩父盆地が一望できる眺めの良い場所です。



山の下側を眺めると石灰岩が見えています。ここからは、両神山、後立山連峰、浅間山、草津白根山、榛名山などの山々が望めます。



この山が石灰岩でできていることを改めて再確認できます。しかし、この展望台は写真を撮るときには必ず金網が写ってしまうのがいけていないところですね。金網を写らないように撮るには場所を少し移動しなければなりません。



遠くの山々を望遠レンズで写し撮りました。



展望台を見終わった後、小持山へと向かいます。が、道を間違え、浦山口の登山道を下っていってしまいます。途中で、「ん?なにかおかしいぞ…?」と思い、近くにいた6人組のグループに、小持山に行きたい旨を伝えると、「こっちではないですよ、もう少し上の分岐点まで戻らなくてはいけませんね~」と言われ、軽くショック…

今降りてきた道をまた登るのかよぉと思ったら気が遠くなりました。とりあえず、通り過ぎてしまった分岐点まで戻ったところで、ちょうど分岐点から登ってくる登山者に、「こちらへ行くと小持山ですか?」と聞いたら「そうです」と答えてくれて、さらに続けて「あれが小持山で、その隣が大持山です」と教えてくれました。

小持山までは、シラジクボと呼ばれる急傾斜をぐ~んと下って、さらにぐ~んと登っていくコースが目の前にはっきりと見えていました。



時間は14時…。往復したら最低でも1時間以上はかかるはず。きっと僕の歩く速度では戻ってこれないなと判断し、小持山へ行くことを断念。話しかけた彼に、小持山はどんな感じだったのかを尋ねると、

「武甲山は、正面からみると欠けてしまっているんですが、小持山から見る武甲山はこんな風にキレイに見えるんです」と、カメラをポケットからひっぱりだし、少し自慢げに自分の撮った写真を見せてくれました。

僕も小持山から撮る武甲山を目当てにここまでやってきたんだけど、ここで断念することになってしまい、とても残念でなりません。雪がキレイに積もってるし、是非とも行きたかったところだけどやむ終えないですね。

その分岐点には、「発破のお知らせ」と書かれた掲示がありました。この山では、ほんとうに発破が行われているんですね。ちょっとだけ切なくなりました。



再び武甲山頂まで登り、そこから下って帰ることにします。途中、登りでは気づかなかった砕けた木を発見。木に生えた苔を見て、この姿になってからも長い間、地に根を張り続けているんだろうなと思いました。砕けてもなお生き続ける生命力の強さを感じました。



15時50分下山。下りは、1時間40分かかりました。小持山での分岐点で引き返して正解でした。小持山へ向かっていったら明るいうちには帰ってこれなかったかもしれません。



下山後、夕日が沈むのを待つため、時間つぶしに武甲温泉へと向かいました。入館料は800円。とてもキレイな温泉でした。露天の洗い場があるのは新鮮でした。

温泉の売店でお土産を買いました。館内のテレビでは福島県で地震が起きたニュースが流れていました。



武甲山がキレイにみえるスポットが知りたかったので、館内を出る前に店内の人に聞いておこうと思いました。秩父の街並みは意外と電線が多く、武甲山を撮るにあたっていちいち電線が邪魔してしまいます。売店のおばちゃんはいかにも無愛想そうだったので、受付のお兄ちゃんに、

「電線がはいらずに武甲山がきれいに見えるスポットってありますか?」

と聞くと、少し悩んだ後、

「目の前にある橋を左に行くと田園地帯があるので、そこまでいけばきれいに見えると思います」

と教えてくれました。

さっそく行ってみるが、確かに田園地帯にはなっているけど家並みや電線が邪魔になったりして、これといった最適なスポットが見つからない。

探すこと15分。田園地帯の近くに橋らしきものが見えたのでそこまでいってみると…そこは電線がなくて、武甲山がとても美しく見える見晴らしの良い場所でした。橋の上は、それほど交通量も多くなかったので路肩に車を停めて、夕日を沈むのを待ちます。



武甲山の白い雪が夕日で赤く染まるのを期待しましたが、最後まで染まることはありませんでした。きっとここからの角度では赤く染まらないのでしょう。

そんなわけで、夕焼け撮りはあきらめ、夜景撮りに切り替えます。夕日が沈み、街の明かりが点きはじめるまで待ち、夜の武甲山を撮りました。



工場から立ち込める煙が武甲山の歩んできた歴史を象徴しているようでした。武甲山(主に北側斜面)は、石灰岩の採掘によって日々、その姿かたちを変えているらしい。僕はこの日、初めて武甲山を自分の目で見たわけで、50年後の武甲山は現在の姿とはまた違ったふうに形を変えているかもしれません。

武甲山が日本屈指の石灰岩の採掘場であり、日本経済を支える山である限り、採掘が止むことはないのでしょう。

武甲山は、美しい山でとても感動しました。山が削られても、この美しき山がいつまでも秩父のシンボルであり続けて欲しいと願うばかりです。

また会う日まで、武甲山とはお別れです。

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